余白のブログ

考えたり、思い出したり

男子高校生が抱える片思い

うちの職場は圧倒的に男性のほうが多い。

なので、上司、同僚、後輩と色々な男性を見てきたと思う。

その中でもダントツで魅力的だと思った人が、前に一緒に勤務していた富久君(仮名)だ。

 

後輩で、私よりも年下だが、学歴は早慶レベル以上、仕事ができるうえ、素直で親切、話も面白くてノリもいい。

背はそれほど高くないが、可愛らしい見た目で、よく通る声をしている。

私のほうが年上だが、私が仕事でヘマをすると「センパイ〜(笑)大丈夫ですって!」と場を和ませる口調で、フォローしてくれたこともあった。

本当に素敵な男の子で、自分が結婚してなかったら、本気で恋していたと思う。

 

そんな富久君は、独身でしかも彼女がいなかった。

いたこともあるらしいのだが、すれ違いで別れてしまったという。

だから、周囲が彼に女性を紹介するべく、合コン的なものを開催するとノリの良い富久君は参加するのだが、うまくいったという話は聞かなかった。

 

好きな女性のタイプは?と聞かれた時は、「僕のストライクゾーンは、めちゃめちゃ広いですよ」と笑いながら答えるものの、特に彼女ができた様子はなかった。

 

彼には忘れられない女性がいたんじゃないかと私は思っている。

彼は、それを表に出すことは無かったから、推測の域を出ないけれども。

 

富久君は、同級生男子に告白されたことがあるという。

酒席での話だったから、酔っ払っていた私は前のめりになって、もっと詳しく教えてくれとせがんだ。

 

彼は男子高出身なのだが、卒業式の数日後にクラスで打ち上げのような食事会があった。

食事会が終わり、たまたま帰る方向が一緒のクラスメイトがいたので2人で帰った。

そのクラスメイトをA君とするが、A君はいつもであれば別の駅から自転車で帰宅するのだが、数日前から自転車が壊れているので、富久君の最寄駅から出ているバスに乗って帰るとのことだった。

 

富久君はA君とは、あまり話したことはなかったが、A君は浪人生になることが決まっていたので、春からの予備校のことや、富久君が受験した時の話などで、スムーズに会話が続いた。

 

目的の駅に到着し、それぞれが帰路につく時に「会うのが最後になると思うから」とA君から告白され、富久君はたいそう驚いたそうだ。

実は、自転車が壊れたというのも、富久君と一緒に帰るための嘘だった。

富久君は丁重にお断りをした、としか言わなかったが、彼の性格を考えれば気持ち悪がったりせずに本当に丁重に扱ったのだと思う。

 

後で考えてみたら、富久君の席の後ろがA君という時期があったそうで、「僕が後ろにプリント回す時とか、どんな気持ちで受け取ってたんでしょうか」と富久君が言うのを聞いて、私まで切ない気持ちになってしまった。

 

私も少し前の人事異動で、富久君とは部署が離れてしまって、会うことはなくなってしまった。

でも時々、富久君と自分が会話で盛り上がっている夢を見て、すごい嬉しい気持ちだったのに現実ではないことに気づかされ、そのたびにすこし悲しくなる。

 

もしかしたら、A君も似たようなことがあるのかも知れない。

成就しない想いを抱える者同士、もしも出会えたらそんなことを話してみたい。